Kyon {Silence Of Monochrome}

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2018/01/10

ツマグロヒョウモン~3頭のツマさんたち(羽化不全と保護したこ)21~ ツマジロウさん、ありがとう。  



12月10日
風は強いが日差しはたっぷりである。

朝ごはんのまえの日光浴のとき、ケースをみると、ツマジロウさんはまだ昨日のまま、たたずんでいるようだった。
触ってみても、微動だにしない。
不安がよぎった。

日光を入れると、サブロウさんは曲がった不自由な翅をはばたかぜ、元気に動く。
ときおりジロウさんの近くによるが、ツマジロウさんはやはり動かない。



ツマジロウさん、40日目の命だった。



ツマジロウさんは立ったまま、翅を広げたままで亡くなっていたので、まるで生きているようだった。
そっとツマジロウさんを手に取ると、形を変えずに、翅の光沢も、体の産毛もキラキラと光り、複眼も美しいままだった。

柔らかい紙のケースに入れ、ビオラの花を少し入れた。


ツマジロウさん、今までありがとう。。
11月、川沿いで横になっていた蛹を保護し、おそらく羽化不全だろうと、
産まれてくるまで不安だったが、時間をかけて、12月1日に無事に誕生してくれた。
片方の翅は不自由だったけど、なぜか気品のある美しい蝶だった。


大きなケースの中は、とうとうツマサブロウさんだけとなった。


ツマサブロウさんは仲間がいなくなったことに気付いているのだろうか…。

よっちゃんは今日も特大ネットで、日を浴びて、ハタハタ羽ばたいている。
左のパルピが取れてしまって、顔の黒い下地がむき出しになってしまい、
もう片方のパルピも不安げな感じでくっついている…。そして翅も先端がほぼなくなってしまった。
サブロウさんの翅も動くたびにちょっとづつ欠け、右側の翅がザクザクとした感じになってしまっている。
それでも2頭は、まだまだ元気そうだ。


私の願いとしては、ツマサブロウさんとよっちゃん、そして、今育ち盛りのチビ幼虫に、春、桜の花を見せてあげたいこと。
それがかなわなくても、2頭にはせめて、桃の花を見せてあげたい。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

チビの食事を久々に見た。
昨日の残りかけのスミレの葉と、新しい葉をいれておいたところ、チビはややしなびた古いほうの葉を食べた。
新鮮な方が好むのかと思いきや、それを素通りしていくことは結構ある。
そしてしばらくかりかりと小さな音を立てて食べああと、また割りばしの上の方にゆっくりと戻って行った。



夕方、はやめにツマたちの食事とした。
よっちゃんが珍しく口吻を動かしておいしそうに飲んでいる。日中羽ばたいた時間が多かったからかもしれない。

ツマサブロウさんはハチミツ綿棒を近づけても口吻を延ばすことなく、2回目の食事はしなかった。
ゆっくりと動いて、まるめたキッチンペーパーにしがみついた。
おねがいだから、このまま、死んでしまわないでね…と思ってしまった。



ツマジロウさんのことを考えた。
昨日、最後の夕飯のとき、ツマジロウさんは私の指にとまって微動だにしなかった。
それがなんだか不思議だった。

今日の朝、ツマサブロウさんはほんとうに、生きているときと同じ姿だった。
今でも手のひらに乗せれば、生きている蝶のようだ。

眠ったまま、ふうっと魂だけが抜けていったような感じだった。

その魂は、どこへ行ったのだろう。

縮れた翅がふわっと広がって、そこらへんを自由に飛び回っている気がする。

見えない世界が今生きている世界のとなりにあって、
そこですきなだけ蜜をすい、すきなだけ羽ばたいているような気がする。