Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
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2010/02/07

「瞽女と哀愁の旅路」

私の好きな映画の一つに「吉原炎上」という1987年に公開された映画がありますが、
その冒頭で流れる絵がとても印象的で、心に残っています。
それは、吉原遊郭の煌びやかで豪華なイメージとは違い、
お金の為に身売りされた少女たちの苦悩や、
不安と悲しみに満ちた心模様がしみじみと伝わってくる絵画でした。

本日、母と久しぶりに吉祥寺へ出かけたのですが、
お昼を食べようと行きつけの店へ行く途中、
とても素敵な絵が目に留まりました。
「斉藤 真一展:瞽女(ごぜ)と哀愁の旅路」とあります。
入場料もとても良心的な100円でしたので、お昼を取るのにはちょっと早いし・と、
母と入ることにしました。

絵を見ている間、ずっと何か心に引っかかるものがあり、
それがハッキリしないまま、見続けていました。
その中で、特に印象的だったのは、
タイトルにもある「瞽女」さん達を描いた絵です。
瞽女とは、私は初めて知ったのですが、
盲目の女旅芸人の事だと書いてありました。
背景は北国のようですが、主に使われている鮮明な赤い色(実際には赫と表記されていました)がとても印象的で、女性たちの壮絶な生き様が突き刺すように伝わってくる感じでした。
どちらかといえば明るい印象の絵ではありません。
しかし怖さや不気味さというよりも、そこに古く懐かしい空気や人情のようなものを感じたのが不思議でした。

私の祖母も北国の出身でした。
素朴で明るくて暖かな人情を持った人でしたが、
時々聞いた故郷の思い出話が、今目の前にあるその絵と重なるように感じていました。
祖母も幼い頃、母に手をひかれてこの赫い太陽を見ていたのだろうか・と思い、
絵を身近に感じていました。
同時に、私が絵を描く為に足りない部分を気付かされたように思います。

目の前にある、例えば「瞽女」さんの絵には、
その女性たちの人生の断片が凝縮されて、にじみ出ているように感じ、
それを現実に見ているような錯覚に落ちるのです。
その北国の降りしきる雪や凍えるような寒さ、
積雪の上を歩く草鞋の音まで聞こえてくるような、そんな臨場感。

「人生」を一生懸命歩み、その重みと大切さを知り、積極的に対話してきた人であるからこそ、
描ける風景がそこにあると感じました。
そして、今は希薄になりつつある「人情」というものを信じ、
その良さを知っているからこそ、「心」を絵筆にして描けるだろうと思います。
今は無き祖母の人懐っこい笑顔が、頭の片隅から離れませんでした。

そして、絵を見ている間ずっとはなれなかった「ひっかかり」。
それは、パンフレットを見て気付いたのですが、
「吉原炎上」の冒頭に流れていた絵の作者が、斉藤真一氏だったのでした。

町に出れば何かがある。
今日の偶然の出会いに感謝しています。
また一つ、大切な事に気付かされました。
「人生」を描くにはまだまだ経験も乏しく、時間がかかりますが、
それを目標に描き続けていけば、いつかきっと小さな断片のような作品が描けると、
勇気付けられた気がします。
まず自分が「生きる」事に対してもっと関心を持ち、
様々な人の「生き様」に教えてもらおうと思います。