「秘密」
この絵も随分初期に描いた絵で、気に入っているものです。
絵の前方で交わっているのは男女なのかあるいは同性同志なのか、
それはあまり関係はありません。
「秘密」の情事が、多くの傍観者に見られ、吹聴されている事が問題です。
これは、日々世間に流れているゴシップや愛憎劇、事件等、
それらに吸い寄せられて、貼り付いて離れない人間のイメージです。
「人の不幸は蜜の味」とはよく言ったものです。
そのような話題で、メディアはひしめき合っているように見え、
それは、それらを好物としている人々がいるからだという需要と供給の構図が、
私には時々恐ろしく感じます。
「壁に耳あり障子に目あり」そのようなイメージとも近いかもしれません。
東京では20年後4人に1人が、独りでご飯を食べることになるかもしれない、
と聞きましたが、
ご近所との付き合いは希薄になる一方、
でも、世間では「人の噂話」が軒並み連なって手招きしている。
不自然なアンバランスが、ゆっくりと人の心を蝕んでいくように思えます。
「秘密」は誰の心にもある。
生きている上で、秘密は大なり小なり必然的に生まれるものだと思います。
しかし、「秘密」があることすらも秘密にしておかないといけない世の中になってしまったら、
それは不健康で、寂しい気がします。